単位根はあるか
自己回帰 xt=φxt−1+εt では、係数 φ が振る舞いを決めます。∣φ∣<1 なら系列は定常で、平均に引き戻されます。φ=1 なら単位根があり、ランダムウォークでショックは消えず、最良の予測は直近の値です。これは取引にも関わります。平均回帰戦略には前者が必要で、トレンド戦略は後者でも成り立ちます。Dickey-Fuller 検定はモデルを Δxt=γxt−1+εt(γ=φ−1)と書き直し、帰無仮説 γ=0(単位根)を対立仮説 γ<0(定常)に対して検定します。
Δxt=α+βt+γxt−1+i=1∑pδiΔxt−i+εt,DF=se(γ^)γ^,t1/2=lnφln(1/2)(1) 拡張版(ADF)は、残差に自己相関が残らないよう、ラグ付きの差分 Δxt−i を加えます。統計量は γ^ の通常の t 比ですが、帰無仮説の下ではスチューデントの t 分布に従わず、より負側に臨界値がある Dickey-Fuller 分布に従います。定数項ありで5%水準なら約 −2.86、定数項とトレンドありなら約 −3.41 です。統計量が臨界値より小さいときにだけ単位根を棄却します。棄却できないことは弱い証拠にすぎません。φ が1に近い場合や標本が短い場合は検出力が低く、定常だが持続的な系列がランダムウォークと誤られがちです。定常な AR(1) でのショックの半減期は ln(1/2)/lnφ です。
ADFの結果を読むΔxt を
xt−1 に回帰して
γ^=−0.08、標準誤差
0.03 を得たとすると、統計量は
−0.08/0.03≈−2.67 です。5%の臨界値
−2.86 に対して十分小さくないので、単位根は棄却しません。対応する
φ^=0.92 は、系列が本当に定常なら半減期が
ln(0.5)/ln(0.92)≈8.3 日です。統計量が
−3.4 なら基準を超え、平均回帰的な系列として扱えます。
- ADFの帰無仮説:単位根がある。統計量がDickey-Fullerの臨界値より小さいときだけ棄却する。
- 検出力が低い:持続的な定常系列は棄却されないことが多く、棄却できないことは証明にならない。
- 定常な AR(1) でのショックの半減期:ln(1/2)/lnφ。
ラボ:採点される内容
- Dickey-Fuller係数15点
- 半減期15点
- 検定統計量15点
- 棄却するか15点
- 用語を結び付ける15点
- 単位根検定を行う10点
- 棄却できないことは証明ではない15点