一緒に動く2つのランダムウォーク
それぞれ1次和分の2つの価格系列 xt と yt でも、長期的な関係を共有することがあります。ある組み合わせ zt=yt−α−βxt が定常なら、2つの系列は共和分しています。どちらもさまよいますが一緒にさまよい、差 zt は平均に戻り続けます。これがペアトレーディングの統計的な土台で、スプレッドが異常に広がったとき、割高な側を売り割安な側を買って、縮むのを待ちます。共和分は長期の価格水準についての概念です。日次リターンが一緒に動くかを測る相関とは違い、水準が近くにとどまるかについては何も言いません。
zt=yt−α−βxt,Zt=szzt−zˉ,t1/2=lnφln(1/2),Δyt=−λzt−1+…(1) Engle-Granger 検定は2段階です。まず最小二乗で yt を xt に回帰して、α とヘッジ比率 β を推定します。次に残差 zt に ADF 検定を行います。残差は当てはめた回帰から得られるため、通常の ADF 臨界値では甘すぎ、Engle-Granger の臨界値(定数項あり2系列の5%で約 −3.34)を使います。単位根を棄却できればペアは共和分しており、スプレッドは半減期 ln(1/2)/lnφ(φ はスプレッドの AR(1) 係数)で平均に戻ります。誤差修正の見方では、昨日のスプレッドが正なら、今日は y が下がるか x が上がります。取引では、スプレッドを z スコアに標準化し、∣Z∣ が約2を超えたら入り、0付近で出て、β で両脚の大きさを決めます。リスクは現実的です。関係が壊れる、β がドリフトする、コストが小さなスプレッドを食う、何千ものペアを試せば偶然通るものが多数見つかる。だから経済的な理由でペアを選び、標本外で確かめます。
スプレッドとそのシグナルy を
x に回帰して
α=10、
β=1.5 を得たとします。
x=40、
y=73 のとき、スプレッドは
z=73−10−1.5⋅40=3 です。スプレッドの平均が
0、標準偏差が
1.5 なら z スコアは
Z=2 で、
y は
x に対して割高です。取引は
y を100単位売り、
x を
1.5⋅100=150 単位買います。スプレッドの AR(1) 係数が1日あたり
0.95 なら、半減期は
ln(0.5)/ln(0.95)≈13.5 日で、待つのは数時間ではなく数週間と考えるべきです。
- 共和分:各系列はさまようが、その線形結合は定常。
- Engle-Granger:回帰し、残差をより厳しい Engle-Granger 臨界値の ADF で検定する。
- ペアトレード:スプレッドの z スコアで取引し、β で両脚の大きさを決め、約1半減期で縮むと見込む。
ラボ:採点される内容
- スプレッド15点
- zスコア10点
- スプレッドの半減期15点
- 両脚の大きさを決める10点
- 検定結果を読む15点
- 用語を結び付ける15点
- ペアトレードを組む10点
- 相関は共和分ではない10点