釣鐘形のためのフィルタ
状態が直線的に動き、ノイズがすべて釣鐘形のとき、うれしいことが起こります。状態についての信念は永遠に釣鐘形のままです。釣鐘形に必要な数は平均 m と分散 P の2つだけなので、フィルタはその2つを持ち運べばよいのです。これがカルマンフィルタで、この設定では厳密な答えです。毎日2つの段階を踏みます。予測では平均はそのままで分散が q 増えます。更新では観測 y が平均を割合 K(ゲインと呼びます)だけ自分の方へ引き寄せ、分散は減ります。
P−=P+q,K=P−+rP−,m=m−+K(y−m−),P=(1−K)P−(1) 更新は単なる加重平均で、新しい平均は (1−K)m−+Ky です。ゲイン K は 0 から 1 の間にあります。予測が非常に不確か(P− が大きい)か、観測が正確(r が小さい)なときは 1 に近づき、データを信頼します。逆の場合は 0 に近づき、予測を信頼します。差 y−m− は驚きで、イノベーションと呼ばれます。更新のたびに 1−K<1 なので分散は減り、予測のたびに q 増えます。十分に長く回すと、両者は一定の水準でつり合います。
2日間のフィルタリング信念
N(0,2)、
q=0.5、
r=1、最初の観測
y1=2 とします。予測:
P−=2.5。ゲイン:
K=2.5/3.5=0.714。更新:
m1=0+0.714×2=1.429、
P1=(1−0.714)×2.5=0.714。翌日
y2=1:予測
P−=0.714+0.5=1.214、
K=1.214/2.214=0.548。驚きは
1−1.429=−0.429 なので
m2=1.429−0.548×0.429=1.194。長期的には予測分散は
P−=q+P−r/(P−+r) を満たす値に落ち着き、この数ではちょうど
1、定常ゲインは
0.5 です。
同じフィルタで時間とともに変わるベータも追えます。状態はランダムウォークのように漂うベータ βt で、観測は株式のリターン yt=βtmt+et(mt は市場リターン)です。変わるのはゲインが K=P−mt/(P−mt2+r) になる点だけです。市場が大きく動いた日はベータについて多くを教え、mt≈0 の日はほとんど何も教えません。2005年以降のアップルとSPYでは、全期間のベータは 1.07 ですが、q=10−3 のカルマンフィルタは2008年末に 0.77、2018年末に 1.42、最終日に 0.40(標準誤差は約 0.25)と見積もります。
- 1日2つの数:すべてが線形で釣鐘形なら、平均と分散で足りる。
- ゲインは信頼のつまみ:K が 1 に近いと新しいデータを、0 に近いと予測を信頼する。
- 限界:ボラティリティ自体が隠れている、あるいはノイズが厚い裾をもつと、信念は釣鐘形でなくなり粒子が必要になる。
ラボ:採点される内容
- 最初のゲイン15点
- 更新後の平均15点
- 更新後の分散10点
- 2日目15点
- 定常水準10点
- ノイズの大きい観測10点
- 用語を結び付ける10点
- なぜ更新で分散が減るのか15点