既存の変数から新しい変数を作る
金融では、価格をリターンに、リターンを対数リターンに、ポジションをその損益にと、確率変数を絶えず変換します。線形変換 Y=aX+b では規則は厳密で、E[Y]=aE[X]+b、Var(Y)=a2Var(X) となり、正規分布は正規分布のままです。リターンにレバレッジ a を掛けるとボラティリティは ∣a∣ 倍、分散は a2 倍になり、定数を足すと平均がずれるだけでばらつきは変わりません。
fY(y)=fX(g−1(y))dydg−1(y),E[g(X)] ≥ g(E[X])(1) 非線形な変換 Y=g(X) では、平均をそのまま変換することはできません。Y の密度は変数変換の公式に従い、fX を逆関数で評価して伸び率 ∣dx/dy∣ を掛けます。X が正規分布なら Y=eX は対数正規分布で、密度は fX(lny)/y です。イェンセンの不等式は、凸関数 g について E[g(X)]≥g(E[X]) と述べます。たとえば正で定数でない X について E[eX]>eE[X]、E[1/X]>1/E[X] です。平均は曲がった関数とは交換できません。
対数リターンとイェンセンの差1日の対数リターンは
r=ln(Pt/Pt−1) です。複数日にわたってグロスのリターンは掛け算、対数リターンは足し算になります。対数リターン
+0.05 と
+0.07 の合計は
0.12 で、グロスのリターンは
e0.12=1.1275、つまり
+12.75% です。次に、対数リターン
X∼N(0,0.04) を考えます。
E[X]=0 ですが
E[eX]=e0.02≈1.0202 で、期待グロスリターンは
eE[X]=1 をイェンセンの差
σ2/2 だけ上回ります。
- 線形:E[aX+b]=aE[X]+b、Var(aX+b)=a2Var(X)。
- 変数変換:fY(y)=fX(g−1(y))∣dx/dy∣。
- 対数リターンは時間で足し算。イェンセン:凸関数 g で E[g(X)]≥g(E[X])。
平均リターンが複利リターンと違う理由+50% と −50% のリターンの平均は 0% ですが、1.5×0.5=0.75 で25%の損失になります。平均が意味を持つのは対数のスケールで、複利の成長率は対数リターンの平均であり、平均リターンの対数より約 σ2/2 小さくなります。資産のボラティリティが高いほど、この目減りは大きくなります。 ラボ:採点される内容
- 線形変換:平均10点
- 線形変換:分散10点
- 対数リターンの複利計算15点
- イェンセンの差15点
- 逆数でのイェンセン15点
- 対数正規分布の密度15点
- なぜ対数リターンか20点