1ステップの記憶を持つ過程
マルコフ連鎖は有限個の状態の間を移り、次の状態は現在の状態だけに依存します。P(Xt+1=j∣Xt=i, 過去の履歴)=Pij。モデル全体が遷移行列 P で、各行は確率分布(行の和は1)です。市場は、穏やかな局面と荒れた局面、強気と弱気といったレジームを切り替えるものとしてよく説明され、マルコフ連鎖はその切り替えの最も単純なモデルです。
P(n)=Pn,πP=π,i∑πi=1(1) n ステップの遷移確率は行列のべき乗 Pn の成分で、これまでの線形代数のトピックの行列の積がそのまま働きます。定常分布 π は πP=π を満たし、これを初期分布にすればずっと保たれます。どの状態からどの状態へも到達でき(既約)、一定の周期で巡回しない(非周期的)連鎖では、定常分布は一意で、どの初期状態からもそこへ収束します。πi は状態 i に長期的に滞在する時間の割合です。状態を離れるまでの滞在時間は幾何分布で、平均は 1/(1−Pii) です。
強気市場と弱気市場日々の状態を強気(B)か弱気(R)とし、
P=(0.90.20.10.8) とします。2日後は
P2=(0.830.340.170.66) で、強気相場から始めたとき2日後に弱気相場である確率は0.17です。定常分布は
0.1πB=0.2πR を解いて
π=(2/3, 1/3) となり、長期的に市場は3分の2の時間を強気状態で過ごします。強気レジームは平均
1/(1−0.9)=10 日続きます。
- マルコフ性:次の状態は現在の状態だけに依存する。
- n ステップ:Pn を使う。定常:成分の和が1で πP=π を解く。
- 継続期間:自己遷移確率が p の状態は平均 1/(1−p) ステップ続く。
レジームは観測ではなくモデル化されるもの現実の市場はレジームを宣言してくれません。当てはめたマルコフ連鎖は切り替えの確率を与えますが、現在のレジームはリターンから推定しなければなりません。状態が隠れている場合は隠れマルコフモデルになり、後のスキルで扱います。推定した遷移確率自体もノイズを含むため、10日のような継続期間にも大きな不確実性があります。
ラボ:採点される内容
- 2日間の遷移20点
- 定常分布15点
- レジームの継続期間15点
- 2日で強気から弱気へ10点
- マルコフ性15点
- 収束するとき10点
- 定常分布の意味15点