隣り合う誤差が連動するとき
通常の標準誤差は、すべての観測が新しい情報をもたらすと仮定します。金融データはこれをしばしば破ります。3か月で測ったリターンを毎月サンプルすると重なり合い、各観測は隣の観測と2か月を共有して誤差が一緒に動きます。ボラティリティが集中するときも同じです。対処法は係数をそのままにして標準誤差だけを変えることです。ニューウィー・ウェスト推定量(不均一分散と自己相関に頑健なので HAC とも呼ぶ)は、残差のラグ付き自己共分散 γℓ に、打ち切りラグ L でゼロになるバートレット重み 1−ℓ/(L+1) を掛けて足し合わせ、長期の分散を推定します。statsmodels では .fit() に cov_type='HAC' と cov_kwds={'maxlags': L} を加えるだけです。
ω^=γ^0+2ℓ=1∑L(1−L+1ℓ)γ^ℓ,γ^ℓ=n1t=ℓ+1∑netet−ℓ,se(zˉ)=ω^/n,L≈⌊4(100n)2/9⌋(1) 5つの数の系列平均
2、偏差
1,1,0,−1,−1 の系列
z=3,3,2,1,1 を考えます。
γ^0=4/5=0.8、
γ^1=(1+0+0+1)/5=0.4 で、隣同士が似ているので正です。
L=1 のバートレット重みは
1−1/2=0.5 なので
ω^=0.8+2⋅0.5⋅0.4=1.2、
se=1.2/5=0.490。通常の標準誤差は
1/5=0.447(
s2=SSE/(n−1)=1)で、平均のt統計量は
2/0.447=4.47 から
2/0.490=4.08 に下がります。自己相関が負なら、逆に標準誤差は小さくなります。
実データで効果の大きさを見ましょう。SPY の3か月平均リターンを毎月サンプルすると、重なり合う 256 個の観測で 2.78% です。通常の標準誤差は 0.456%、t=6.10 となります。平均を引いた系列の自己相関はラグ 1、2、3 で 0.68、0.35、0.08 で、3か月中2か月が重なることが生む三角形の形です。ニューウィー・ウェストでは L=2 で標準誤差 0.664%(t=4.18)、L=4 で 0.732%(t=3.80)、L=6 で 0.762%(t=3.65)となり、重ならない 86 四半期では t=3.55 です。アップルの月次3ファクター回帰(319 か月)では変化は小さいものの確かで、バリュー係数の標準誤差は 0.144 から 0.170 に増え、t統計量は −4.98 から −4.22 になります。
- 係数は同じで標準誤差だけ新しく:HACが変えるのは不確実性だけで、推定値は変わらない。
- 重なりがラグを決める:h か月リターンを毎月サンプルするなら、少なくとも L=h−1、多くはさらに数個多く取る。
- 誠実なtを報告する:隣り合う誤差を考慮すると、t=6がt=4になることがある。
ラボ:採点される内容
- 分散の項10点
- 1次の自己共分散10点
- 長期分散15点
- HAC標準誤差15点
- 頑健なt統計量10点
- statsmodelsの呼び出し10点
- 用語を結び付ける10点
- 通常のtが大きすぎる理由20点